職場でのコーチング(感情を扱う)
人は皆違う
職場で上司や部下、同僚あるいは他部署の人の発言や行動に悩まされたり、いらだちを感じるのはどうしてでしょうか?
・人はそれぞれ違う
からなんです。しかしなぜか学校教育の影響や組織管理の影響を受けて、我々は「違う」ことよりも「同じである」ことを優先してきたので、この「人はそれぞれ違う」という原則を受け入れることが難しいのだと思います。
「悩み」「イライラ」の原因は「自分と同じじゃない」⇒「怒り」という「解釈から感情への癖」だと私は常に考えています。
「どうしてそういう事言うの?」
「なんで判らないの?」
こうした思いと感情は、どれも「自分と違う」「なぜ同じじゃないの?」「腹が立つ」という解釈のプロセスで生まれます。自分にとって「当たり前」のことも人にとっては「当たり前じゃない」のですが、これを受け入れられないんですね。
・人はそれぞれ違う
という「言葉」を自分の解釈のプロセスに持つように意識すると、とても気持ちが楽になります。
感情と行動の関係
違いを受け入れられない理由としては
・人の行動は感情とセットの癖
になっていることが挙げられます。人が取る「行動」には「感情」が関わっているということを理解しないと、職場での人間関係の改善、部下の行動変容を実現することはできません。「感情」と真正面から向き合って下さい。
人はおよそ以下のような手順で「行動」に至ると考えられます。
1.事実・情報を受け付ける
2.解釈をする
3.感情を持つ
4.考えて判断をする
5.行動する
このプロセスを常に意識すると、なぜ人がそのような「行動」に出るのかの「人の癖」を理解する助けになると思います。
このプロセスでとても重要なのは「2.解釈をする」「3.感情を持つ」です。
・人は自分の都合で解釈する
つまり、見た事や聞いた事を自分に都合のいいように「意味付け」します。この「意味付けの仕方」を変えてもらわないと、何回言っても同じ結果が起きます。「何度言えば解るんだ?」につながるのはこの「解釈の癖」が原因です。
さらに「解釈」した事にたいして「感情」を持ちます。ここも自分の都合で「感情」を決めます。「何に喜び」「何に怒るか」「何に悲しむか」は人それぞれが自分の都合で決めているのです。「感情の癖」です。
その後、「解釈」と「感情」を活用して「どうするか?」について「考えて判断」をします。
よく「考え方を変えるべき」という言葉を聞きますが、そのためには「解釈の仕方」と「感情の持ち方」を変える必要があることを知るべきです。
「考え始めたら間に合いません」
考える前に「癖」を直してもらう必要があるのです。
ちなみに、言葉や文字で説明するとこのプロセスは数分かけて行われるように感じるかもしれませんが、現実には1秒以内の出来事です。
だからこそ、コツを知らないと人に良い影響を与えることができません。
感情の扱い方
では、どうやって「解釈」と「感情」を扱えばいいのでしょうか?
1.事実を伝える
2.問いを活用する
この2つの方法で扱います。
1.事実を伝える
コーチング的には「フィードバック」と言います。「フィードバック」は誤解されやすい言葉です。コーチングにおいての「フィードバック」は「相手の取った言動の事実を伝える」ことです。
自分の感想や提案、アドバイス、評価をするのは「フィードバック」とは言いません。
なぜ、「事実を伝えるのか?」それは相手に「気付いてもらい」「再度解釈をする機会」を提供するためです。
・人は自分を知るのが一番難しい
と言われます。これは「情報量の差」です。人を知る時は「目でみて」「耳で聞いて」となりますが、自分の場合「目で見れない」ので情報が減ります。だから人から教えてもらわないと「自分を正しく知る」ことができないのです。
「怒ってないのに、怒っていると言われた」
「不機嫌じゃないのに、不機嫌そうと言われた」
これは相手が「目で見た」情報も活用しているからです。きっと表情が怒っていたり、不機嫌だったのでしょうね。
なので、「解釈」「感情」を扱う時に大切なことは
・正直に相手の様子を伝えてあげることです。
怒った表情をしていたらそれを伝える、うつむきがちであればその様子をそのまま伝えて下さい。
くれぐれもアドバイスや批評は加えないで下さい。
「怒った表情をしているね」
「うつむいているね」
それだけ伝えて下さい
・答えを出すのは相手
です。あなたが伝えたことをきっかけに相手はまた例のプロセスを回すのです。
「受付」「解釈」「感情」「考え・判断」⇒「行動」
その時に「問いを活用」してください
「どうすれば怒らないで済むんだろうね?」
「どうしたら前を向けるだろうか?」
と解決策を考える機会を提供してあげてください。コーチングでは「考えて行動するのは相手」です。コーチ側が「考えてはいけません」ここが極めて重要です。
すべてを相手に委ねてください。
いかがだったでしょうか?
職場で部下と関わるときに「感情」は避けては通れないものです。しかも人それぞれです。
だからこそ人が「行動に至るプロセス」を理解して、
「良い行動につながる解釈の仕方、感情の持ち方」
ができるように「事実を伝え」「問いを活用」して関わって下さい。
きっと部下に変化が現れるはずです。