職場でのコーチング(相談を生かす)
相談には種類がある
いつも同じ入り方で恐縮です
「職場へのコーチング導入には工夫が必要です」
なぜなら、部下は
1.コーチングを期待していない
2.コーチングを知らない可能性が高い
からです。コーチングが機能する大前提は、コーチングが求められていることです。だから職場での活用には工夫がいります。
今回取り上げる職場でのコーチングの生かし方は
「相談」
リーダーの皆様の大切な役割りのひとつとして、部下からの相談に向き合う、というのがあると思います。日頃この”相談”をどのようにされているでしょうか?
まずこれまでの経験を振返ると、相談には3種類あると考えています
1.依存型の相談
これは、部下が自分で考えることを止めてしまい、誰かから「答え」を教えてもらおうとする、丸投げ型の相談です。
2.リスク回避型の相談
これは、とりあえず上司に相談した履歴を残すことが狙いです。後で「聞いてなかった」と言われないための相談です
3.探索型の相談
これは、自分で「答え」を出す覚悟で、様々な人のアイデアを活用し、思考の幅を広げたいという思いからの相談です
振返ってみて、どのタイプの相談が自分には多く寄せられて来たでしょうか?それによって、リーダーとしての部下との関わり方がある程度明らかにできます。
「依存型相談」が多い場合、リーダーがトップダウン型で指示、命令が多く、決めるのは上司、決まったことをその通りやるのが部下、という関係にある可能性が高いです。この場合「依存型の質問」が増えます
「リスク回避型相談」はリーダーが責任追及型で、うまく行かなかった時に部下の責任をしつこく追求する場合に増えるタイプの相談です。
「探索型相談」が多い場合、リーダーは権限委譲型である可能性が高いです。意見やアイデアは出すが、決めるのは部下の仕事と考え、部下に意思決定を委ねることが多ければこのタイプの質問が増えます
この中で「リスク回避型質問」は撲滅しないと、成果が出せる自立型のチームにはなりません。
これも場を改めて詳しくお伝えしたいことですが、「結果責任は上司が取る」ものです。つまりリーダーがリーダーの責任を果たしていないチームでのみ発生する「相談」ですから、プロフェッショナルなリーダーを目指すなら一件たりともこうした相談が来ないようにしましょう。
「依存型相談」と「探索型相談」はバランスを取ることが大切です。
緊急事態や結果責任が極めて重い案件についてはリーダーが意思決定をして指示すべきであるケースも職場には結構あります。
コーチングを職場に導入する時に起こりやすい間違いとして、こうした案件までコーチングしてしまうことです。緊急性が高かったり、部下が取れる責任の重さを超えたテーマはコーチングしないで下さい。(ここを教えてくれるコーチ養成機関はないと思います)
そして、できるだけ「探索型相談」を増やす方向に進めていくことが自立を促すことに繋がります。
どうやればそうなるかをお伝えしていきます
相談されたらどうする
どうすれば「探索型相談」を増やしていくことが出来るか?手順があります
1.相談内容がコーチングに適しているか判断する
2.どのタイプの相談か見極める
3.部下に「問い」を持ち帰ってもらう
この3つの手順で「探索型相談」を増やしていくことができます
まず、部下からの相談内容がコーチングに適しているかどうかを判断して下さい。
先程もお伝えしましたが、緊急性が高い案件や部下が背負えないような重大な結果責任が伴いそうな大型案件はコーチングに適しません。
あと、部下の成長につながらない程度のレベルの相談であれば、時間の浪費を避けるためさっさと「答え」を教えてあげてください。
会社のルールなどはそうですよね。決まった社内申請書の書き方や提出先の相談など、「知らない」からできないことは、すぐ教えてあげて下さい。
次に、相談案件がコーチングに適しているとしたら、相談のタイプを見極めて下さい。「依存型」「リスク回避型」「探索型」のどのタイプの相談になっているでしょうか?
そして、状況に適した「問い」を投げかけてあげてください。
「依存型」だと判断した時には、以下の問いかけをしてください
「まず、あなたの考えを聞かせて?」
これは、「自分で考える努力をして下さい」というメッセージを伝え、自分で考える行動を促進する「問い」です。
コーチング的に言うと「答えはあなたの中にある」という事になります。
この言葉も誤解されることが多いので、別の場でこのテーマを丁寧に扱いたいと思いますが、ここでは「考えてもらうための問い」だとご理解ください。
依存してくる場合、部下は考えることを放棄して楽をしようと考えてしまっている可能性が高いです。
これでは部下の成長を期待することができません。あるいは上司が不在になると、業務が停滞してしまうリスクが高まります。あなたがリーダーだとしたら、あなたがいなければ何もできないチームになってしまう可能性があるということです。そうならないために「問いかけて下さい」
「探索型」だと判断した時には、以下の問いかけをしてください
「他にはどんな選択肢があると思う?」
「何を心配しているの?」
探索型の相談になる場合、部下は自分で「答え」は出しています。あるいは出そうとしています。気にしていることは
「自分の思い込みだけで答えを出していないだろうか?」
「大事な検討事項を忘れてないだろうか?」
というようなことです。だからこそ検討の幅を広げて、独りよがりの答えにならないように、そして不安を抱えて行動が止まらないようにしてあげて下さい。
後はやってみて、成功したら部下の手柄、失敗したら上司が責任を取るだけです。部下のナイスチャレンジは結果に関わらず認めてあげてください。コーチングでは「承認」と言います。
「リスク回避型」はもうお伝えしましたよね。上司の責任回避が引き起こす相談です。部下のせいではありません。
お伝えしたように、しっかりと相談のタイプを見極めて、部下の「自発性」と「行動促進」につながる「問い」を投げかけてあげてください。
「正しい問いを考えるのが正しい答えを出す唯一の方法」
と言われてます。良い「問い」を部下に投げかけてください。
そのためにも日頃から「問いの選択肢」を持っているとうまく出来ると思います。これもトライアンドエラーでいろいろと試してみてください。きっと効果的な「問い」を沢山手に入れることができるはずです。
相談を増やすためにする事
最後に、そもそも「相談」がこなければコーチングのチャンスも訪れません。コーチングに適した「相談」が沢山来るようにするためにはどうしたらよいでしょうか?
「信頼関係の構築」
「役割りと責任の明確化」
「対等な対話ができる環境作り」
繰り返し、お伝えして来ている、上記3つを常に意識した行動をリーダーが取ることです。
毎朝、名前を呼んで、部下の目をしっかりと見て、笑顔で挨拶を交わす。
「考えて行動するのは部下」
「成果が出たら部下の手柄」
「失敗したら責任は上司が取る」
という役割りと責任について一人ひとりと「合意」をする。
そして、議論をする時に立場の違いを捨て、対等に対話をする習慣を作る。
「誰の意見かは判断に影響しない」
という空気を職場内に溢れさせて下さい。チームでいる意味はそこにあります。
これらを意識して、「相談」が増えれば個人とチームの成長が加速されていくはずです。
「ひとつの相談がコーチングのチャンスです。相談で部下の能力を引き出しましょう」